請求書の相殺処理の仕組みと、相殺領収書の書き方

監修:冨川和將(税理士)2020年8月5日

この記事では、相殺処理の仕組みについて解説します。請求書・相殺領収書の書き方なども具体例とともに紹介しておりますので、参考にご覧ください。

WEB帳票発行システム「楽楽明細」の製品情報はこちら

取引先との合意があれば、相殺処理は可能

通常、代金の支払いは取引の都度行われるものです。しかし、同一の取引先と複数の取引が継続的に行われている場合などに、商品の引き渡し時には代金の支払いを行わず、支払期限を決めてその間の取引の代金をまとめて支払う代金の支払い方法があります。その方が振込手数料や手間がかからず、スムーズなやり取りができるからです。また、その都度現金でやり取りをするのは手間がかかり、セキュリティ対策も講じなければならないため、金額が大きくなるほどまとめた方が便利でしょう。

その際に、こちらからサービスや物を提供し、将来的に支払われる代金を「売掛金(債権)」といいます。こちらには相手に代金を請求する権利があります。一方、サービスや物を購入し、将来的に支払う代金は「買掛金(債務)」といいます。こちらから相手側へ代金を支払う義務があります。

両社間で双方向の取引がある場合は、事前に合意をすることで、お互いの債権債務を対当額で消しあったり、減額させたりできます。この処理方法が、「相殺処理」です。この方法なら、支払処理にかかる手数料や作業の人件費、印紙代などが節約できます。相殺処理をする場合は、基本的には事前に両社間の合意が必要です。

ただし、条件を満たせば、一方的な意思表示でも相殺処理ができます。条件とは、両社間で互いに債権を有していること、金銭など同種の目的を有する債務であること、ともに弁済期である(支払期限を過ぎている)ことなどです。特に、相手側の債務に関しては、相手側が支払期限まで支払いをしない権利は奪えません。しかし、相殺をしたい側が、自社の権利を放棄して支払期限前に相殺処理をすることは可能です。

請求書の相殺処理の仕組み

例えば、A社がB社から10万円分の商品を購入し、B社がA社から10万円分のサービスを受けた場合、互いに受発注があり、どちらにも10万円の債権(債務)があるため、相殺処理をすることで双方の債権(債務)が消滅します。現金でのやり取りは発生しません。A社がB社から10万円分の商品を購入し、B社がA社から8万円分のサービスを受けた場合は、同額分の8万円が相殺処理されます。B社の債務は消えますが、A社には差額の2万円をB社に支払う義務が残ります。

相殺処理の通知を行えば、売上回収の手間がかからなくなるというメリットもあるでしょう。相殺通知書には、相手側の債権と自社の債権の金額や相殺額、相殺後の支払金額などを記入し、相殺処理の旨を伝えます。しかし、相殺処理の通知をする際に、「〇日までに支払われなければ相殺処理を行う」など、条件や期限をつけることはできません。また、相殺処理は便利でメリットもありますが、不透明になりやすいのがデメリットです。そのため、経理上は相殺前の総額を記録し、日付や取引内容もしっかり記入しておくと良いでしょう。

相殺処理する場合の請求書の書き方

一般的に請求書とは、取引先に提供した商品やサービスの代金を支払ってもらうための書類です。請求書発行日や請求金額、代金振込先などを記入します。正しい金額を記載し、控えを残しておくことが大切です。消費税分は分けて記載します。相殺処理をする場合は、請求書に元の請求金額と相殺金額、相殺後の支払金額を記載します。しっかり内訳がわかるように記載しましょう。例えば、「請求金額10万円、-8万円(相殺金額)、支払金額2万円」と記載できます。「-」のかわりに「△」や「▲」を使う場合もあります。

そして、お互いの帳票に、いつどのような取引で相殺処理を行ったのか、途中経過がしっかりわかるように記録を残してください。書類を2枚に分け、請求書の請求金額には相殺前の金額を記載し、別紙に相殺金額と実際の支払金額を記入する方法もあります。どちらの方法で請求書を作成するかに関しては、請求書を作成する前に支払いの条件や期日などに関して契約書を確認しなおし、請求書の書式は取引先の書式に合わせると安心です。直接相手側に聞いてみるのも良いでしょう。

相殺領収書とは

相殺領収書とは、相殺処理を行ったことを証明する書類です。発行する義務はありません。しかし、発行しておけば、お互いが相殺に合意済みであることの証拠となり、相殺を確実に行うためにも役立ちます。相殺金額やお互いの債権(債務)を明確にし、二重払いや二重請求などのトラブルを防ぎやすいでしょう。取引ごとに、請求書とは別に領収書も発行しておくと、いつ相殺処理を行ったのかなどを後から確認するのにも便利です。相殺処理は後から確認するのが難しく、取引内容が明確になっていないと、税務調査などで余計な手間がかかる場合があります。そのため、実際の入出金がなくても、第三者が確認しても理解できるような形で、証拠を残しておきましょう。

一般的に、領収書は印紙税法の課税文書に該当します。そのため、国税庁(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7141.htm)によると、5万円以上100万円以下の領収書には200円、100万円~200万円以下は400円など収入印紙を貼付する必要があります。しかし、実際に金銭のやり取りが発生していない相殺領収書は、「金銭の受取書」とはみなされず、収入印紙は必要ありません。ただし、「上記金額相殺しました」や「売掛金と相殺し領収しました」などと記入し、必ず相殺を明示しましょう。明示が無い場合、収入印紙の貼付けが必要となります。また、一部だけ相殺した場合など、実際に金銭の移動があった場合は、相殺金額を除いた支払額で収入印紙の金額が変わります。その際も、「うち買掛金と相殺〇円」や「相殺金額〇円を含む」など、しっかり相殺を明記しましょう。日付は、後から確認しやすいように、両社で同じ日付を記入します。実際に金銭のやり取りがあった場合は、金銭の授受が行われた日を記入してください。

両社間の債権(債務)が同額で、相殺処理のみの場合は、双方が同じ金額を記載します。両社間の債権(債務)額が異なり、一部だけを相殺した場合は、内訳として相殺分を記載して領収書を1枚にまとめると良いでしょう。例えば、自社の債務が8万円で相手の債務が10万円の場合は、領収金額として10万円を記入します。そして、内訳として「お振込金額2万円、買掛金と相殺分8万円」と記載します。または、相殺金額と領収金額の2枚に分けて領収書を作成することも可能です。その際、相殺金額のみを記載した領収書は、お互いに同額を記載したものを交換してください。例えば、相殺領収書には、領収金額として8万円と記載し、「上記金額相殺しました」とただし書きをします。そして、もう1枚の領収書に、領収金額として2万円と記入すると良いでしょう。

会社によっては、業務効率上領収書を発行したがらない場合もありますが、相殺処理をした両社間のうちどちらかが相殺領収書を発行するなら、お互いに交換することが大切です。こちらだけが領収書を発行し、相手からは領収書をもらえなかった場合、自社側の債務が消滅したことを証明できる証拠がありません。そうすると、自社側にだけ債務が残り、支払いを請求されてしまう場合もあるでしょう。相殺処理をする場合は、請求書や領収書の書き方などに関しても、前もって相手側と確認しておくことが大切です。

的確な請求書を作成して相殺処理をスムーズに行おう

相殺処理は、両社間で受発注が発生している場合に行える、手間や収入印紙代も節約できる便利な仕組みです。わかりやすい請求書を作成し、後で金銭の流れをしっかり追えるように、相殺処理の証拠となる相殺領収書をお互いに交換しておきましょう。取引の都度、取引の明細や証拠となるものを残しておくことで、相手企業とのトラブルを防ぐことが可能ですし、自社の経理処理もわかりやすくスムーズに行えるようになるはずです。

WEB帳票発行システム「楽楽明細」の資料ダウンロードはこちら

  • 資料請求

    3分でわかる!
    「楽楽明細」の製品詳細資料をプレゼント。

  • お問い合わせ・無料トライアル

    機能やコストシミュレーション、導入事例など、お気軽にお問い合わせください。
    実際に操作して体験できる無料トライアルのお申し込みもこちらから。

  • お役立ち資料ダウンロード

    コスト削減や、業務改善の実践的なガイドブックを無料でダウンロードできます。