監修者:谷澤 佳彦(税理士)
近年、テレワークの普及や、ペーパーレス化・脱ハンコの流れを受け、経理業務においてもデジタル化が進行しています。その中でも特に、請求書の電子化に注目が集まっています。
また、国税関係書類に関する法律である電子帳簿保存法の改正により、請求書の電子保存の要件が緩和され、導入手続きが簡略化されるなど、国も請求書の電子化を後押ししています。
本記事では、請求書の電子化について「具体的にどのようなことか?」「なぜ注目されているのか?」「どうしたら良いかわからない…」という経理担当者の疑問や悩みを解消していきます。請求書を電子化するメリット・デメリット、導入のポイントなどと一緒に詳しく見ていきましょう。
請求書の電子化とは、紙で作成していた請求書をPDFなどの電子データで作成して、メールやWebサイト、システムを経由して取引先に送ることを指します。電子化された請求書は電子請求書と呼ばれます。以下でその扱いについて詳しく見ていきましょう。
電子請求書は法的に有効です。紙の請求書と法律上の有効性に違いはありません。
また、請求書だけでなく、領収書、見積書、支払明細書などを電子化した場合も同様に、法的に有効な書類として認められています。
なお、保管義務についても紙の場合と同様に7年間の保存が必要となります。
そもそも請求書は、紙の場合であっても押印する義務はありません。
請求書への押印は、あくまで日本のビジネス習慣(商習慣)の一つで、実際に発行元を記載する箇所に角印や社印を押印することが広く普及しています。
電子請求書に押印する場合は、電子印鑑を導入したり、元データであるエクセルなどに印鑑の画像データを貼り付けたりする方法が一般的です。
電子請求書の送付方法は、大きく次の3つに分けられます。
それぞれの送付方法の特徴は以下となります。
使い慣れたメールでの送付となるため、手軽である一方、一度に多くの請求書を送付する際は、宛先の間違いなど誤送付のリスクがあります。
無料のファイルストレージサービスなどを利用する方法です。請求書データをWEBサイトにアップロードし、発行されたダウンロード用URLを相手に送ることで送付することができます。但し、一定期間が過ぎると過去の請求書データは削除される場合が多いです。
請求書の作成から送付まで自動で行えるため、誤送付のリスクも低いでしょう。また、過去の請求書データを一元管理できるため、再発行や修正もスムーズに対応できます。
急速に請求書の電子化が進む背景には、電子帳簿保存法の改正が挙げられます。令和4年(2022年)1月1日から施行された改正電帳法では、「電子で受け取った請求書は電子で保存すること」が義務付けられました。
但し、その一方で電子保存の要件が緩和され、導入手続きが簡略化されたため、発行側・受取側ともに請求書の電子化に取り組みやすくなったと言えます。
電子帳簿保存法は、平成10年 (1998年)に施行された、会計の帳簿や決算書、請求書や領収書など国税関係帳簿・書類の電子保存について定められた法律です。
書類を電子データとして保存する際の手続き・要件が細かく定められています。令和4年1月1日に法改正されましたが、そのポイントは次の2点です。
電子データで受け取った書類は出力して紙で保存することが認められず、電子データのまま保存することが義務付けられました。
税務署長による事前承認の手続きが廃止され、保存する電子データに求められる検索項目が削減されたことで保存要件が緩和されました。
特に1は大きなポイントです。完全義務化まで2年の猶予期間がありますが、今から電子保存への移行準備を進める必要があるでしょう。
参考:国税庁「電子帳簿保存法が改正されました」
今回の電帳法改正の目的について、財務省は以下のように説明しています。
経済社会のデジタル化を踏まえ、経理の電子化による生産性の向上、テレワークの推進、クラウド会計ソフト等の活用による記帳水準の向上に資するため、国税関係帳簿書類を電子的に保存する際の手続を抜本的に見直しました。
引用元:財務省「令和3年度税制改正について」
このような国の意向を踏まえると、今後も電子帳簿に対する関する義務化と条件緩和が進み、今以上に電子化が普及することが予想されます。
電子化は経理業務の効率化に役立ち、生産性を向上させるものであることは確かです。いずれ電子化に対応しなければならないのであれば、早めに着手することをおすすめします。
請求書を電子化するメリットを、「発行側」「受取側」の観点から詳しく見ていきましょう。
請求書発行側のメリットとしては、以下3点が挙げられます。
各メリットを個別に詳しく解説します。
紙の請求書発行には、以下のような手間と時間がかかります。
紙に請求書を印刷。その請求書を1枚1枚三つ折りにし、宛名ラベルを貼った封筒へ封入。誤って他社の情報を封入してしまうと個人情報の流出になってしまうので注意が必要。最後に、切手を貼って郵便局に持ちこみ、ようやく発行作業完了。(2018年7月1日より、郵便物の集荷廃止に伴い、持ち込みの負担が増しています。)
請求書を電子に切り替えることで、これらの手間を大幅に削減できる可能性があります。請求書発行システムを使って電子化する場合は、請求データをシステムにアップロードするだけで請求書が作成され、数クリックで送付できるケースが多いです。
発行済みの請求書が電子請求書発行システム内で一元管理されているため、誰でも検索・閲覧でき、再発行や修正が必要になった際、すぐに対応することができます。
参考:楽楽明細「請求書を再発行する際の注意点」
前述の通り、請求書の発行業務には膨大な事務作業が発生します。経理担当の時間がこれらの作業に圧迫されると、コア業務以外の部分で人件費が発生するということになります。
さらに紙を調達したり、印刷をしたりといったコストもかさみ、郵送代もかかることになります。こうしたコストを、請求書の電子化は大幅に削減してくれます。
以下のリンクでは、請求書電子化によるコスト削減効果をざっくり試算できる資料を無料配布していますので、興味のある方は参考にご活用ください。
請求書電子化のコスト削減効果 試算シート(無料)
※上記資料は、予告なく公開終了することがあります。
請求書受取側のメリットとしては、以下3点が挙げられます。
各メリットを個別に詳しく解説します。
電子請求書は、メール添付やWEBからのダウンロード形式で送られてきます。郵送のようにタイムラグがなく、発行されてから即座に受け取ることができるのが特長です。
例えば、「月次決算の都合上、第1営業日には請求書が手元に届いている必要がある」などといった企業にとっては、大きなメリットになります。また、郵便法改正により土曜日の郵送が廃止され、請求書を発送してから届くまでの期間が長くなったため、こうした企業を取引先に持つ発行側企業にとってもメリットがあります。
電子化された請求書は、ファイルデータとして格納をしておくことができます。紙の書類に比べて検索性に優れるため、過去の請求書を確認するのに手間がかかりません。請求業務にかける作業時間の短縮にもつながります。
平成17年(2005年)に施行されたe-文書法により、紙で受け取った書類をスキャンして電子データで保管することが認められました。電子データで保管する場合は、紙の書類を保管する必要はありません。
e-文書法施行前は電子データでの保管が認められておらず、7年間は紙で保管する義務がありました。経費と手間の面で大きな負担になっていたので、多くの企業が電子保管に切り替えました。
ただし、それでも紙保存から電子保存への変更を希望する3ヶ月前に申請し税務署長の許可を得る必要があるなど、依然電子化へのハードルは高い状況にありました。令和4年(2022年)1月1日の子帳簿保存法改正ではその申請も廃止され、さらに保管の要件も緩和されることになりました。
書類の電子化に取り組みやすい環境が徐々に整ってきましたので、今後はより電子化の流れが加速していくことが予想されます。
※詳しい情報は顧問税理士や自社の法務部門に確認してください。
参考:国税庁「電子帳簿保存法の概要」
電子データで受け取った請求書は、複数の経理担当者が確認できる点もポイントです。業務の属人化がなくなり、情報共有がしやすくなります。
このように請求書の電子化には様々なメリットがあります。もちろん、電子請求書発行システムの導入検討や、紙から電子に切り替わることを取引先に説明し受け入れてもらうための手間は必要になりますが、長い目で見ると請求書を電子化することのメリットは大きいと言えるでしょう。
請求書を電子化するメリットについてご紹介してきましたが、「メリットは理解したが、本格的に電子化する前にデメリットも押さえておきたい」という経理担当者も多いでしょう。
ここからは、請求書の電子化に伴うデメリットや導入前に知っておくべきポイントをご紹介します。
「電子請求書ではなく郵送で送ってほしい」「FAXで送ってほしい」という取引先は一定数存在します。また、顧客先に請求書を直接届けることによって、次の商談などに繋げたいという社内のニーズもあるかもしれません。
そのような事情はどの企業でも少なからずありますので、100%の電子化は難しいかもしれませんが、多くのケースで業務負担は大幅に削減できるでしょう。また、電子請求書発行システムによっては、郵送(郵送代行)やFAXなど取引先によって送付方法を使い分けられる機能を備えているものもあります。
電子請求書発行システムの導入を進めるには、業務フローの見直しが必要となる企業が多いでしょう。新たに社内ルールなどを作成し、運用しやすいものにしていく必要があります。
請求書の電子化には、電子請求書発行システムの初期費用や運用コストが必要となります。もし、予算以上のコストが想定される場合は、IT導入補助金などの活用を検討することをおすすめします。
請求書の電子化が実現されれば、今までの人件費、印刷費、紙代、切手代、封筒代などの経費が削減されることや、業務効率化により空いた時間は別の業務に充てることができます。結果的には社内全体でのコスト削減に繋がるケースが多いでしょう。
請求書を電子化するにあたり、事前に請求先の取引企業に周知する必要がありますが、この際の案内文は非常に重要です。むしろ、案内文で請求書電子化の成否が決まる、といっても過言ではありません。
では、どのような案内文を作成したらよいでしょうか?
結論から申しますと、
「〇月から電子化しますのでよろしくお願い致します。不明点はお問い合わせください。」
というように、まずは電子化する意思を明確に伝えることがコツとなります。
その意思を伝えた上で、「従来通りの郵送も選べますがどちらにしますか?」という案内をすれば、ほとんどの顧客は理解するでしょう。さらに郵送を希望する顧客のためのお問合せ先を記載しておくことで顧客の不満は最小限にすることができるでしょう。
また、顧客が電子請求書を受け取ることによる、保管のしやすさや、社内共有の手軽さなどのメリットを案内文に盛り込むことも大切です。
「楽楽明細」では請求書電子化にあたっての案内文テンプレートのご用意や、まだメールアドレスなどの情報が取得できていない場合の取得フォームなどもご用意しています。ご興味があれば、以下のリンクより「3分で分かる」資料をダウンロードしてみてください。
楽楽明細:「楽楽明細」の機能詳細や解決できる課題をご紹介(資料ダウンロード)
電子請求書システムを導入する際には、どのような部分にフォーカスすれば良いのでしょうか。以下5つのポイントをご紹介します。
ここまでに何度かお伝えした通り、電子請求書システムは請求書の作成(発行)以外にも多くの機能を兼ね揃えています。他の帳票類の作成や会計システムとの連動など、対応できる範囲を確認し、自社の業務フローに見合うシステムを選びましょう。
請求書の発行・原本控えの保管における法要件を満たすために、改正後の電子帳簿保存法やインボイス制度に対応した電子請求書システムであることが必要です。
電子請求書はテレワークで扱える手軽さがあります。一方でWEB上での運用となりますので、セキュリティが脆弱な場合は社外からの不正なアクセスの標的になり得ます。
そのため、セキュリティ面を万全に対策している電子請求書システムを選ぶことが重要です。もし、心配な場合は社内のシステム担当者や、インターネットセキュリティの専門家などにアドバイスを受けならシステムの選定を進めることをおすすめします。
クラウド型の電子請求書システムであれば、導入費用を安く抑えられる傾向があります。また、法改正への対応やセキュリティ強化などのバージョンアップが多く、常に最新の機能を利用できるサービスも多いでしょう。
スムーズに導入して安定的な運用に乗せるには、電子請求書システムを提供する企業からのしっかりとしたサポートを受ける必要があります。不慣れな社員も一定数存在することを想定し、導入時や将来的なサポート内容を確認するようにしましょう。
このような5つのポイントを押さえておけば、数ある電子請求書システムの中から自社が選ぶべきシステムの具体像が見えてくるでしょう。まずはいくつかのサービス提供元から資料を取り寄せてみるなど、比較検討してみることをおすすめします。
ラクスが提供する電子請求書発行システム「楽楽明細」は、請求書発行の手間を大幅に削減するクラウド型のシステムです。各法制度に対応し、面倒な経理業務の効率化に大きく貢献します。
請求書のCSVまたはPDFデータをアップロードするだけで、請求書作成(発行)が可能です。分かりやすい画面と簡単な操作で、業務の効率化や、経費削減を実現することができます。さらに納品書、支払明細、領収書なども請求書と同じように簡単な操作で作成(発行)することが可能です。
また、「楽楽明細」では「WEB発行」だけでなく発行先に応じて「郵送代行」「FAX発行」を選ぶこともできるため、請求書の電子化を進めながら、紙の請求書がほしいお客様にも対応することができます。
そして、改正後の電子帳簿保存法やインボイス制度にも対応し、JIIMA認証※も取得しています。
※ JIIMA認証とは
電子帳簿保存法の要件を満たしていると判断されたソフトウェアやソフトウェアサービスが認証されます。
(参考:公益社団法人 日本文書情報マネジメント協会)
請求書の印刷、封入、郵送作業など、これまでに経理担当者の負担になっていた作業がなくなり、テレワークに切り替えることも可能になります。さらに、システムの導入から将来に渡る運用まで専属のサポート体制を設けていますので初めて電子請求書に切り替える企業様にも安心してご利用いただいています。
詳細な資料の他に、無料デモや無料トライアル、コスト削減シミュレーションも用意しておりますので、まずはお気軽にお問い合わせください。
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1993年に税理士資格を取得し、「谷澤佳彦税理士事務所」を開設。近年は相続・事業承継に対する税務相談を数多く対応する。
司法書士や不動産鑑定士など他の専門家とタッグを組み、組織として企業の繁栄・事業承継をサポートすることも得意とする。
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